確率の問題を数列の漸化式を使って解く方法です。
確率と数列の融合問題になるので試験の出題範囲が両方ある大学入試では良く見かけます。
2項間漸化式が多いですが、条件に合わせた漸化式をつくる、その漸化式を解く、という段階があるので大きく差の出るところです。

確率と数列の漸化式の融合問題

漸化式は、\(a_{n+1}\,,\,a_n\,,\,a_{n-1}\) などの前後のいくつかの項の関係を表しています。
これは確率にも使えます。

例えば、\(\,n\,\)回目に\(\,\mathrm{A}\,\)となる確率を\(\,p_n\,\)として、
その前\( \,n-1\,\)回目にどうなっていれば\( \,n\,\)回目に\(\,\mathrm{A}\,\)となる可能性があるかを考えて漸化式をつくり、
その漸化式を解くことで確率\(\,p_n\,\)を求めることができるというわけです。

言葉で説明するより実際の問題で説明した方がはやいですね。
毎年、いろいろな大学ででていますので練習問題を探すのは簡単でしょう。

例題

A,B,Cの3人が以下の規則で定まる順番で1つのサイコロを振る。
1回目はAが振る。
2回目以降は前回の結果に依存し、
 \( n\) 回目に出た目が \(\,1\,\),\(\,2\,\),\(\,3\,\) のいずれかならば同じ人が \( n+1\) 回目に振る。
また、\( n\) 回目に出た目が
 \(\,4\,\) ならば A が、
 \(\,5\,\) ならば B が、
 \(\,6\,\) ならば C が、
 \( n+1\) 回目に振る( \( n=1\,,\,2\,,\,3\,,\,\cdots\) )。
\(n\) 回目にA,Bがサイコロを振る確率を\(\,p_n\,,\,q_n\,\)とする。

次の問いに答えよ。
(1) \( p_2\,,\,q_2\,\)を求めよ。
(2) \( p_{n+1}\,,\,q_{n+1}\,\)を\( \,p_n\,,\,q_n\,\)を用いて表せ。
(3) \( p_n\,,\,q_n\,\)を求めよ。

漸化式を利用する確率問題は条件が多く、長いです。
しかし、この程度の問題文は短い方です。
共通テストでは全分野の問題文がもっと長くなりますよ。

この問題においては
 「おいおい、いきなり連立漸化式かよ。」
と思わなくて大丈夫です。
 \(\,p_n\,\)と\(\,q_n\,\)は別々に求められる問題です。
漸化式を解く練習が増えるのでここではこの1題に絞りました。

ただ、この確率の漸化式利用は問題文をよく読んで考えないと立式すらできません。
漸化式を解くことより、漸化式を立てるまでの過程を大事にして下さい。

確率の漸化式は確率と数列の融合になります。
なので確率と数列が試験科目として分けられている場合はこの融合は今のところ考えられません。
「確率」としてはです。
しかし、漸化式、数列として出題される可能性はあるのでやっておきましょう。
大学別の本試験では良く出ている問題ですよ。

高校入試の場合もそうですが、長い文章ほど条件が多くある場合が多いですね。
条件が多いと言うことは、難しくはなく「ややこしく見える」、ということです。

確率の漸化式の立式方法

1つひとつ整理していきましょう。

 A,B,Cの3人がサイコロを振る。

最初はAが振ります。

\(\,n\,\)回目以降
 サイコロの出目が「\(\,1\,,\,2\,,\,3\,\)なら同じ人」
 サイコロの出目が「\(\,4\,\)ならA」
 サイコロの出目が「\(\,5\,\)ならB」
 サイコロの出目が「\(\,6\,\)ならC」
がサイコロをふります。
条件は確認しながら進めないと解けませんよ。

 \(p_n\) : \( n\) 回目にAがサイコロを振る確率
 \(q_n\) : \( n\) 回目にBがサイコロを振る確率

ここまでが問題にある条件です。

(1)\(\, p_2\,\)とは2回目にAが振る確率です。

1回目Aが振っているので、
出目が1,2,3,4」のときAが2回目を振ることになります。

 \(\hspace{10pt} p_2=\displaystyle \frac{4}{6}=\underline{ \displaystyle \frac{2}{3} }\)

\(\,q_2\,\)は2回目にBがサイコロを振る確率です。

1回目A(Bではない)が振っているので、「出目が5」のときBが振ることになります。

 \(\hspace{10pt} q_2=\underline{ \displaystyle \frac{1}{6} }\)

ここまでは問題の意味をとるための問題です。

(2)重要なのはここですね。

 「 \(\, p_{n+1}\,,\,q_{n+1}\,\) を \(\, p_n\,,\,q_n\,\) を用いて」

で\(\,p_n\,,\,q_n\,\)が混じった漸化式になるのかな、と思えるのですが違います。
実際にやってみないとわからないことです。
条件通りに進めていきましょう。

\( \,p_{n+1}\,\)は\(\,(n+1)\,\)回目にAがサイコロを振る確率で、
 ① \( n\) 回目にAが振った後 、\((n+1)\) 回目もAが振る場合
 ② \( n\) 回目にA以外の人が振り、\( (n+1)\) 回目にAが振る場合
のどちらか(二通り)が考えられます。

 \( n\) 回目にAがサイコロを振る確率は「 \( \color{red}{p_n}\) 」で、
\( n\) 回目にA以外の人がサイコロを振る確率は、
 \(n\) 回目にAがサイコロを振らない確率のことで「 \(\color{blue}{1-p_n}\) 」となります。

①②は同時には起こらないので、
「(確率の)加法定理」が成り立ちます。

①の確率は(1)と同様に「A⇒A」の場合なので
 \(\hspace{10pt}\displaystyle \color{red}{p_n}\times \frac{4}{6}=\frac{2}{3}\,p_n ・・・①’\)

②の確率は「B,C⇒A」の場合なので、
A以外の人が振った後にAが振る確率は \(\displaystyle \frac{1}{6}\) だから
 \(\hspace{10pt}\displaystyle (\color{blue}{1-p_n})\times \frac{1}{6}=\frac{1}{6}\,(1-p_n) ・・・②’\)

よって、\(\,(n+1)\,\)回目にAが振る確率\(\,p_{n+1}\,\)は\(\,①’\,\)と\(\,②’\,\)を加えて
 \(\hspace{10pt}\displaystyle p_{n+1}=\frac{2}{3}\,\color{red}{p_n}+\frac{1}{6}\,(\color{blue}{1-p_n})\)

 \( \displaystyle ∴ \underline{ p_{n+1}=\frac{1}{2}\,p_n+\frac{1}{6} }\)


通常「加法定理」と言えば「三角関数の加法定理」に使う言葉ですが、確率でも加法定理は存在します。これは「排反事象の加法定理」と言いますが気にしなくて良いです。

簡単にいうと、\(\,(n+1)\,\)回目にAが振る確率は
 「 \( n\) 回目にAが振る → \( (n+1)\) 回目にAが振る確率」
 「 \( n\) 回目にBかCが振る → \( (n+1)\) 回目にAが振る確率」
の二通りが考えらるので、
この確率の和が、\( (n+1)\) 回目にAがサイコロを振る確率 \( p_{n+1}\) です。

次は \( q_{n+1}\) の \( (n+1)\) 回目にBがサイコロを振る確率です。

 \( p_{n+1}\) と同様に、

 ③ \( n\) 回目にBが振った後 、\( (n+1)\) 回目にBが振る

 ④ \( n\) 回目にB以外の人が振り、\( (n+1)\) 回目にBが振る

のどちらかなので、
 \( n\) 回目にBがサイコロを振る確率が\(\, \color{red}{q_n}\)
 \( n\) 回目にB以外がサイコロを振る確率が\(\, \color{blue}{1-q_n}\)
であることから
 \(\hspace{10pt}\displaystyle q_{n+1}=\frac{2}{3}\times \color{red}{q_n}+\frac{1}{6}\times (\color{blue}{1-q_n})\)

 \(\displaystyle ∴  \underline{ q_{n+1}=\frac{1}{2}\,q_n+\frac{1}{6} }\)

2項間漸化式を解いて確率を求める

(3)
(2)で出てきた漸化式
 \(\hspace{10pt}\displaystyle p_{n+1}= \frac{1}{2}\,p_n+ \frac{1}{6}\)
 \(\hspace{10pt}\displaystyle q_{n+1}= \frac{1}{2}\,q_n+ \frac{1}{6}\)
を解くだけです。

⇒ 2項間漸化式から一般項を求める問題の解き方の基本パターン

ただ、2つの漸化式は「初項が違う」ので一般項は変わってきますよ。

 \(\hspace{10pt}\displaystyle p_{n+1}=\frac{1}{2}\,p_n+\frac{1}{6}\\ \\
\displaystyle \Leftrightarrow  p_{n+1}-\frac{1}{3}=\frac{1}{2}\left(p_n-\frac{1}{3}\right) ・・・⑤\)
と変形できるので、
 \(\hspace{10pt}\displaystyle p_\color{red}{n}-\frac{1}{3}=a_\color{red}{n}\)
とおくと
 \(\hspace{10pt}\displaystyle p_{\color{blue}{n+1}}-\frac{1}{3}=a_{\color{blue}{n+1}}\)

なので⑤は
 \(\hspace{10pt}\displaystyle a_{n+1}=\frac{1}{2}\,a_n\)
この漸化式が表す数列は等比数列で初項が
 \(\hspace{10pt} a_1=p_1-\displaystyle \frac{1}{3}=1-\displaystyle \frac{1}{3}=\displaystyle \frac{2}{3}\)
です。

最初はAがサイコロを振ることは決まっているので\(\color{red}{\,p_1=1\,}\)ですよ。
公比は \(\displaystyle\frac{1}{2}\) なので
 \(\hspace{10pt} a_n=\displaystyle \frac{2}{3}\cdot \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^{n-1}\)

つまり、
 \(\hspace{10pt} p_n-\displaystyle \frac{1}{3}=\displaystyle \frac{2}{3}\,\left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^{n-1}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} \underline{ p_n=\displaystyle \frac{2}{3}\,\left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^{n-1}+\displaystyle \frac{1}{3} }\)

漸化式の処理になれてくれば、
 \(\hspace{10pt} p_n-\displaystyle \frac{1}{3}=a_n\)
とおく必要はありません。
⑤から等比数列として
 \(\hspace{10pt} p_{n}-\displaystyle \frac{1}{3}=\left(p_1-\displaystyle \frac{1}{3}\right)\left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^{n-1}=\displaystyle \frac{2}{3}\cdot \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^{n-1}\)

 \( ∴ \, p_n=\displaystyle \frac{2}{3}\cdot \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^{n-1}+\displaystyle \frac{1}{3}\)

と求めても問題ありません。

 \(\hspace{10pt} q_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{2}\,q_n+\displaystyle \frac{1}{6}\)
については数列 \( \{p_n\}\) と初項が違うだけで同じ公比等比数列です。

1回目はAが振ると決まっているので1回目にBが振る確率は\(\,0\,\)です。
つまり、\(\,q_1=0\,\)なので
 \(\begin{eqnarray}\displaystyle
q_n- \frac{1}{3}&=&\left(\color{red}{q_1- \frac{1}{3}}\right)\left( \frac{1}{2}\right)^{n-1}\\
&=&\color{red}{-\frac{1}{3}}\cdot \left( \frac{1}{2}\right)^{n-1}
\end{eqnarray}\)

 \( ∴ \, \underline{ q_n=-\displaystyle \frac{1}{3}\cdot \left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^{n-1}+\displaystyle \frac{1}{3} }\)

以上です。

\(n\) 回目に「A」になるのは、
 \( n-1\) 回目に「B」という状態からAになるか、
 \( n-1\) 回目に「Bではない」という状態からAになるか、
とに場合を分けることが多いです。

これはいくつも練習しないとうまく処理できないでしょうが、
良くでる問題でもあるので数学に配点が大きい大学を受験する場合はチェックしておいた方が良いです。

⇒ 2項間漸化式から一般項を求める問題の解き方の基本パターン

漸化式の処理ができなければ解けないので、2項間の漸化式は解けるようにしておきましょう。
この問題の漸化式は1番の基本になるタイプなので数列でも必須です。

⇒ 数列(一般項から数学的帰納法まで)の要点

確率の分野で取り上げた方が良い項目ですが、
確率をやっている頃は数列をまだ習っていない、という人がほとんどの高校生の状態なので数列で取り上げています。