分数型の漸化式が、ちょっとした変形によって通常の階差数列タイプに変わる漸化式の解き方です。
漸化式一般的に言えることですが、分母に数列を含む場合は嫌がった(さけた)方が得策となることがほとんどです。
何とか変形できないかいろいろと工夫してみましょう。ここでは簡単な工夫で片付く問題です。
分数型数列の逆数を置換する
どのタイプの漸化式も変形した後は似たような計算処理になります。
だから漸化式を解いて一般項を求める計算をひたすらやるよりも、
最初の処理方法を何度も繰り返し見ておいた方が良いですよ。
数列 \( \{a_n\}\) は
\( a_1=\displaystyle \frac{1}{2}\hspace{7pt},\hspace{7pt}\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=\displaystyle \frac{1}{3a_n}+1\hspace{7pt}(n=1\,,\,2\,,\,3\,,\cdots\,)\)
によって定められる。
数列 \(\{a_n\}\) の一般項を求めよ。
分母がじゃまだからといって \( a_{n+1}a_n\) をかけるなんてことはしないで下さい。
収拾がつかなくなりますので、ここでは添え字の性質を利用して変形しましょう。
\(\hspace{10pt}\displaystyle b_\color{red}{n}=\frac{1}{a_\color{red}{n}}\)
とおくと
\(\hspace{10pt}\displaystyle b_{\color{red}{n+1}}=\frac{1}{a_{\color{red}{n+1}}}\)
となることから
\(\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=\displaystyle \frac{1}{3a_n}+1\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} b_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{3}\,b_n+1\)
ここまでは大丈夫ですか?
ここからはふた通りありますよね?
1つは特性方程式を利用する2項間漸化式として解く。
もう一つは階差数列タイプにするためズラして引く。
どちらでも良いですが、どちらもできた方が良いのは間違いないので両方やっておきましょう。
特性方程式から変形すると
\(\displaystyle \color{red}{\alpha}=\frac{1}{3}\color{red}{\alpha }+1 \Leftrightarrow \color{red}{\alpha}=\frac{3}{2}\)
なので
\(\begin{eqnarray}
b_{n+1}&=&\displaystyle \frac{1}{3}\,b_n+1 \\
\Leftrightarrow \hspace{5pt} b_{n+1}-\displaystyle \frac{3}{2}&=&\displaystyle \frac{1}{3}\left(b_n-\displaystyle \frac{3}{2}\right)
\end{eqnarray}\)
よって数列 \(\displaystyle \left\{b_n-\frac{3}{2}\right\}\) は、
初項\(\left(\displaystyle b_1-\frac{3}{2}\right)\)が
\(\begin{eqnarray}
b_1-\displaystyle \frac{3}{2}&=&\displaystyle \frac{1}{a_1}-\displaystyle \frac{3}{2}\\
&=&2-\displaystyle \frac{3}{2}\\
&=&\displaystyle \color{red}{\frac{1}{2}}
\end{eqnarray}\)
公比が\(\,\displaystyle \color{blue}{\frac{1}{3}}\,\)の等比数列で
\(\hspace{10pt} b_n-\displaystyle \frac{3}{2}=\displaystyle \color{red}{\frac{1}{2}}\cdot \left(\displaystyle \color{blue}{\frac{1}{3}}\right)^{n-1}\\ \\
\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} b_n=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot \left(\displaystyle \frac{1}{3}\right)^{n-1}+\displaystyle \frac{3}{2}\)
逆数を取ることを視野に入れて通分までしておくと、
\(\begin{eqnarray}\displaystyle
b_n&=& \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{3^{n-1}}+ \frac{3}{2}\\
&=& \frac{1+3^n}{2\cdot 3^{n-1}}
\end{eqnarray}\)
よって
\(\hspace{10pt}\displaystyle a_n= \frac{1}{b_n}= \underline{ \frac{2\cdot 3^{n-1}}{3^n+1} }\)
これが漸化式を変形した、特性方程式を利用した方法です。
分数型漸化式に階差数列を利用する方法
次はズラして引いて、階差数列に持ち込む方法をやってみましょう。
はっきりいってどっちでも良いんですよ。
誘導がなければ得意な方でやってください。
\(\displaystyle b_n=\frac{1}{a_n}\) とおくと \(\displaystyle b_{n+1}=\frac{1}{a_{n+1}}\)
となることから
\( \displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=\displaystyle \frac{1}{3a_n}+1\hspace{5pt} \Leftrightarrow \hspace{5pt} b_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{3}\,b_n+1\)
ここまでは同じです。
\(\displaystyle b_{n+1}=\frac{1}{3}\,b_n+1\)
\(\displaystyle b_n =\frac{1}{3}\,b_{n-1}+1\)
の辺々を引いて、
\(\displaystyle b_{n+1}-b_n=\frac{1}{3}(b_n-b_{n-1})\)
センター試験風に置きかえましょうか。
\( c_n=b_{n+1}-b_n\)
とおくと数列 \( \{c_n\}\) は \(b_n\) の階差数列で、
\( c_{n+1}=\displaystyle \frac{1}{3}\,c_n\)
これは等比数列なので
\(\displaystyle b_1=2\hspace{7pt},\hspace{7pt}b_2= \frac{1}{3}\cdot 2+1= \frac{5}{3}\)
であることから数列 \(\{c_n\}\) の初項は
\(\displaystyle c_1=b_2-b_1= \frac{5}{3}-2=- \frac{1}{3}\)
よって
\(\displaystyle c_n=- \frac{1}{3}\cdot \left( \frac{1}{3}\right)^{n-1}\)
このとき \( n≧ 2\) において
\(\begin{eqnarray} \displaystyle
b_n&=&b_1+\sum_{k=1}^{n-1}\left\{- \frac{1}{3}\cdot \left( \frac{1}{3}\right)^{k-1}\right\}\\
&=&2+\left( – \frac{1}{3} \right) \left\{ \frac{ 1-\left( \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n-1} }{ 1-\left( \displaystyle \displaystyle \frac{1}{3}\right) } \right\}\\
&=&2+\left( – \frac{1}{3} \right) \left\{ \frac{ 1-\left( \displaystyle \displaystyle \frac{1}{3} \right)^{n-1} }{ \left( \displaystyle \displaystyle \frac{2}{3}\right) } \right\}\\
&=&2+\left( -\frac{1}{3} \right)\cdot \frac{3}{2}\left\{1-\left( \frac{1}{3} \right)^{n-1}\right\}\\
&=&2- \frac{1}{2}\left\{1-\left( \frac{1}{3} \right)^{n-1}\right\}\\ \\
&=&2- \frac{1}{2}+ \frac{1}{2} \left( \frac{1}{3}\right)^{n-1}\\ \\
&=& \frac{3}{2}+ \frac{1}{2\cdot 3^{n-1}}\\ \\
&=& \frac{3^n+1}{2\cdot 3^{n-1}}\end{eqnarray}\)
これは \( n=1\) のとき \( b_1=2\) で一致するので、
\( a_n=\displaystyle \frac{1}{b_n}=\displaystyle \frac{2\cdot 3^{n-1}}{3^n+1}\hspace{7pt}(n≧ 1)\)
上のゴチャゴチャとしたややこしそうに見える計算は等比数列の和です。
解答上に示すのは途中の要所要所だけで良いですよ。
ただし、この程度の計算はできないと数列では通用しません。
後の方の処理はいつもと同じで、違うのは最初の置き換えだけです。
階差数列タイプに変形出来るものが多いので得意技にしておくのも良いですね。
分数の逆数を取ると上手くいくタイプは
こちらで説明しています。
⇒ 漸化式の解き方パターン一覧と一般項の求め方まとめ(階差数列、分数、累乗など)
2項間漸化式から一般項を求める手法は必須としておけば、できるとこるまでで良いですよ。