2重根号の外し方のコツ、ポイントと計算問題の解き方です。
2重根号とは根号(ルート)の中身に根号がついている数のことをいいますが、すべての2重根号が外せるわけではありません。
外せる場合の計算問題の解き方を例題の中で見ておきましょう。
基本となるのは中学の数学で出てくる展開公式です。

2重根号の外し方

根号を2重に含む式を、1重の根号を含む式に変形することを2重根号を外すといいます。

例えば、
 \(\hspace{10pt}\sqrt{8+2\sqrt{15}}\\
=\sqrt{(\sqrt{5}+\sqrt{3})^2}\\
=|\,\sqrt{5}+\sqrt{3}\,|\\
=\sqrt{5}+\sqrt{3}\)
のように根号を簡約します。

2重根号を外す、ということと、2重根号を簡約する、というのは同じ意味です。

これは
 \(\hspace{10pt}(\sqrt{5}+\sqrt{3})^2\\
=(\sqrt{5})^2+2\sqrt{5}\sqrt{3}+(\sqrt{3})^2\\
=5+2\sqrt{15}+3\\
=8+2\sqrt{15}\)
を逆に因数分解して平方の形を作っています。

つまり、
 \(a^2+2ab+b^2=(a+b)^2\)
 \(a^2-2ab+b^2=(a-b)^2\)
を利用していることになります。

⇒ 高校の因数分解公式一覧 たすき掛けや手順(やり方)

因数分解の公式はいろいろな分野で必要になるので確認しておきましょう。 

2重根号の一般的な外し方

2重根号の外す方法を一般的に書くと、
\(\,a,b\,\)を正の数として 
 \(\alpha+\beta=a\)
 \(\alpha\,\beta=b\)
となる正の有理数\(\,\alpha\,,\,\beta\,\)を見つけて
 \(\sqrt{a+2\sqrt{b}}=\sqrt{\alpha}+\sqrt{\beta}\)
 \(\sqrt{a-2\sqrt{b}}=\sqrt{\alpha}-\sqrt{\beta}\)
のように2重根号を外します。

簡単に言うと
 かけて\(\,b\,\)
 足して\(\,a\,\)
になる\(\,2\,\)数\(\,\alpha\,,\,\beta\,\)を求めて
 \(|\sqrt{\alpha}\pm \sqrt{\beta}|\)
とすれば良いのです。

この絶対値ですが、無理数の中の数自体は正の数なので
 \(\sqrt{(\,a+b\,)^2}=|a+b|\)
 \(\sqrt{(\,a-b\,)^2}=|a-b|\)
のように絶対値をつけて根号を外します。

⇒ 絶対値を持った関数のグラフと最大値、最小値の求め方

この中でも絶対値の外し方とルートの中が平方数の場合の根号の外し方の説明をしてあります。

しかし、2重根号を外す場合は\(\,a,b\,\)は正の数なので、
根号の中の数が大きい方を前に持ってくれば絶対値は必要ありません。

 \(\sqrt{(\sqrt{\color{red}{2}}-\sqrt{\color{blue}{3}})^2}=\sqrt{\color{blue}{3}}-\sqrt{\color{red}{2}}\)

ルートの中が足し算の場合と引き算の場合と分けて考えず、
どちらも
 ルートの中の大きい数の方を前
にしておけば絶対値は考えなくて良いです。

 \(\sqrt{(\sqrt{3}+\sqrt{5})^2}=\sqrt{5}+\sqrt{3}\)
 \(\sqrt{(\sqrt{3}-\sqrt{5})^2}=\sqrt{5}-\sqrt{3}\)

ところで、
2つの数\(\,\alpha\,,\,\beta\,\)の求め方は\(\,2\,\)次方程式の解と係数の関係から、 
 \(x^2-ax+b=0 ・・・①\)
の2つの解になります。

だから、2次方程式①の解が無理数になる場合は\(\,2\,\)重根号は外せません。

\(\,2\,\)重根号が外せる式は整数の範囲で組み合わせを探せばすぐに見つかるので練習しておきましょう。 
 

2重根号を外す計算問題の解き方とコツ

例題1
 次の式の2重根号を外し簡単にせよ。

 (1)\(\,\sqrt{10+2\sqrt{21}}\)
 (2)\(\,\sqrt{13-2\sqrt{22}}\)
 (3)\(\,\sqrt{11+4\sqrt{6}}\)
 (4)\(\,\sqrt{4-\sqrt{12}}\)

2重根号を外すには

 \(a^2+\color{red}{2}ab+b^2=(a+b)^2\)

を利用するので根号の中のルートの係数を\(\,\color{red}{2}\,\)にすることがポイントになります。

係数が\(\,2\,\)になっていないときは、
 無理矢理にでも\(\,2\,\)になるように変形する
ことがコツです。

(1)\(\,\sqrt{\color{red}{10}+2\sqrt{\color{blue}{21}}}\)

根号の中のルートの係数は\(\,2\,\)なので
 かけて\(\,\color{blue}{21}\,\)
になる数の組み合わせは
 \(\color{black}{\fbox{1×3}}\) \(\color{black}{\fbox{3×7}}\)
この中で
 足して\(\,\color{red}{10}\,\)
になる数は \(\color{red}{\fbox{3×7}}\) なので
 
 \(\hspace{10pt}\sqrt{10+\color{red}{2}\sqrt{21}}\\
=\sqrt{(\sqrt{7}+\sqrt{3})^2}\\
=\sqrt{7}+\sqrt{3}\)

(2)\(\,\sqrt{\color{red}{13}-2\sqrt{\color{blue}{22}}}\)

これも根号の中のルートの係数が\(\,2\,\)なので、
 かけて\(\,\color{blue}{22}\,\)
になる数の組み合わせを考えます。
 \(\color{black}{\fbox{1×22}}\) \(\color{black}{\fbox{2×11}}\)

この中で
 足して\(\,\color{red}{13}\,\)
になる組は \(\color{red}{\fbox{2×11}}\) なので

 \(\hspace{10pt}\sqrt{13-\color{red}{2}\sqrt{22}}\\
=\sqrt{(\sqrt{11}-\sqrt{2})^2}\\
=\sqrt{11}-\sqrt{2}\)

ルートの中身が大きい方を前に持ってくれば絶対値は考えなくて良いです。

(3)\(\,\sqrt{11+4\sqrt{6}}\)

根号の中のルートの係数が\(\,2\,\)になっていません

 \(\,2=\sqrt{2^2}=\sqrt{4}\,\)

と係数をルートの中に入れるときは平方されて入ることになるので、

 \(\hspace{10pt}\sqrt{11+4\sqrt{6}}\\
=\sqrt{11+\color{red}{2}\cdot \color{blue}{2}\sqrt{6}}\\
=\sqrt{11+\color{red}{2}\cdot \sqrt{6\times \color{blue}{2^2}}}\\
=\sqrt{11+2\sqrt{24}}\)

このように根号の中のルートの係数を\(\,2\,\)にするのです。

ここまでくれば後は同じです。
 かけて\(\,\color{blue}{24}\,\)
になる数の組み合わせは
 \(\color{black}{\fbox{1×24}}\) \(\color{black}{\fbox{2×12}}\) \(\color{black}{\fbox{3×8}}\) \(\color{blue}{\fbox{4×6}}\)

この中で、
 足して\(\,\color{red}{11}\,\)
になる組み合わせは \(\color{red}{\fbox{3×8}}\) なので

 \(\hspace{10pt}\sqrt{11+4\sqrt{6}}\\
=\sqrt{11+\color{red}{2}\sqrt{24}}\\
=\sqrt{(\sqrt{8}+\sqrt{3})^2}\\
=\color{magenta}{\sqrt{8}}+\sqrt{3}\\
=\color{magenta}{2\sqrt{2}}+\sqrt{3}\)

ルートの中は最も簡単な数にしておきましょう。

(4)\(\,\sqrt{4-\sqrt{12}}\)

この場合は根号の中のルートの係数は\(\,2\,\)ではありませんが、
 \(\,\sqrt{12}=2\sqrt{3}\,\)
と通常通りルートの中を素因数分解することで処理できます。

 \(\hspace{10pt}\sqrt{4-\sqrt{12}}\\
=\sqrt{4-2\sqrt{3}}\)

かけて\(\,3\,\)になる数の組み合わせは \(\color{red}{\fbox{1×3}}\) しかありません。

 \(\hspace{10pt}\sqrt{4-\sqrt{12}}\\
=\sqrt{4-\color{red}{2}\sqrt{3}}\\
=\sqrt{(\sqrt{3}-\sqrt{1})^2}\\
=\sqrt{3}-1\)

これもルートの中身が大きい方を前に持ってきます。

ここまでで分かるように根号の中の
 ルートの係数が\(\,2\,\)
になることがポイントですね。

分数の2重根号を外すときのポイント

今度はルートの係数が\(\,2\,\)とは変形しにくい計算をやっておきましょう。

例題2
次の2重根号を外せ。

(1)\(\,\sqrt{3+\sqrt{5}}\)
(2)\(\,\sqrt{2-\sqrt{3}}\,\)

(1)\(\,\sqrt{3+\sqrt{5}}\)

根号の中のルートの係数を\(\,2\,\)にしたいのですが、ルートの中からは出てきません。

そこで、無理矢理\(\,2\,\)を係数にしたときに、
全体の値が変化しない変形をします。

単にルートの前に\(\,\color{red}{2}\,\)をつけると、

 \(\,\sqrt{3+\color{red}{2}\sqrt{5}}\)

で明らかに値が変わります。

そこで分数は約分しても値は変わらないことを逆に行います。

例えば、
 \(\displaystyle x+3y=\frac{2x+6y}{2}\)
の左辺と右辺は値は同じです。

つまり、分子を何倍かしたら同じだけ分母で割れば良いのです。

根号の中身だけを見ると、分子分母とも\(\,2\,\)倍して

 \(\hspace{10pt} 3+\sqrt{5}\\
\displaystyle =\frac{3\times \color{red}{2}+\color{red}{2}\sqrt{5}}{\color{red}{2}}\\
\displaystyle =\frac{6+2\sqrt{5}}{2}\)

と変形しても値は変わっていません。

ところがこの変形をすると分子は因数分解できます。

 \(6+2\sqrt{5}=(\sqrt{5}+1)^2\)

ただし、これは分子だけを見ているので全体を見てみると

 \(\hspace{10pt}\sqrt{3+\sqrt{5}}\\
\displaystyle =\sqrt{\frac{6+\color{red}{2}\sqrt{5}}{2}}\\
\displaystyle =\sqrt{\frac{(\sqrt{5}+1)^2}{2}}\\
\displaystyle =\frac{\sqrt{5}+1}{\sqrt{2}}\)

分子の2重根号は外せましたが分母にはまだ無理数が残っています。
答えの分母に無理数は残さないのが約束なので分母を有理化して
 \(\hspace{10pt}\displaystyle \frac{\sqrt{5}+1}{\sqrt{2}}\\
\displaystyle =\underline{ \frac{\sqrt{10}+\sqrt{2}}{2} }\)

これで2重根号が外せました。

注意点は、
 ルートの中の分子を\(\,2\,\)倍、分母を\(\,2\,\)倍
しているので、
 実際には分母と分子の両方を\(\,\sqrt{2}\,\)倍している
ということです。

なので
 \(\hspace{10pt} \color{magenta}{\sqrt{3+\sqrt{5}}\\
\displaystyle =\frac{\sqrt{6+2\sqrt{5}}}{2}}\)
(これは間違った処理です!)
と、しないようにしましょう。

これだと、
 分子は\(\,\sqrt{2}\,\)倍していて
 分母は\(\,\sqrt{4}\,\)倍している
ことになります。

分母、分子を\(\,2\,\)倍しているのは、
根号の中だけを処理していることは忘れないようにしておきましょう。

(2)\(\,\sqrt{2-\sqrt{3}}\,\)

これも根号の中のルートの係数を\(\,2\,\)とすることができません

そこで、
 \(\displaystyle \sqrt{2-\sqrt{3}}=\sqrt{\frac{2-\sqrt{3}}{1}}\)

とみて分母分子に\(\,\sqrt{2}\,\)をかけてやると
(根号の中の分母分子に\(\,2\,\)をかけるということです。)

 \(\hspace{10pt}\sqrt{2-\sqrt{3}}\\
\displaystyle =\color{red}{\sqrt{\frac{4-2\sqrt{3}}{2}}}\\
\displaystyle =\color{magenta}{\sqrt{\frac{(\sqrt{3}-\sqrt{1})^2}{2}}}\\
\displaystyle =\frac{\sqrt{3}-1}{\sqrt{2}}\\
\displaystyle =\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{2}\)

\(\,2\,\)行目は分母分子にかける数を間違えないように全体にルートをつけて、
\(\,3\,\)行目は分子と分母を分けてルートをつけると少しは見やすくなります。

その際、分母のルートは最後に処理すれば良いのでしばらくそのままにしておけば良いです。

 \(\hspace{10pt}\sqrt{2-\sqrt{3}}\\
\displaystyle =\color{red}{\sqrt{\frac{4-2\sqrt{3}}{2}}}\\
\displaystyle =\color{magenta}{\frac{\sqrt{4-2\sqrt{3}}}{\sqrt{2}}}\\
\displaystyle =\color{blue}{\frac{\sqrt{(\sqrt{3}-\sqrt{1})^2}}{\sqrt{2}}}\\
\displaystyle =\frac{\sqrt{3}-1}{\sqrt{2}}\\
\displaystyle =\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{2}\)

ルートの中身が大きい方を前に持ってくるというのは忘れないようにしましょう。
絶対値でルートを外すのは手間がかかるだけです。

2重根号の外し方は発展的かもしれませんが、単なる式変形に過ぎません。

使っているのは
 \(a^2+2ab+b^2=(a+b)^2\)
 \(a^2-2ab+b^2=(a-b)^2\)
という公式と
 \(\,\begin{eqnarray}
| x |
=
\begin{cases}
\,x & (\,x\,≧\,0\,) \\
-x & (\,x\,<\,0\,)
\end{cases}
\end{eqnarray}\,\)

絶対値の処理だけですが、
ルートの中の数が大きい方をいつも前にすれば考えることはありません。

⇒ 絶対値がついた方程式や不等式問題の解き方

ただ、絶対値のあつかいは関数や方程式でも大切なポイントになるので復習しておくと良いですね。

⇒ 数と式(高校数学Ⅰ)の要点

絶対値が出てくるのは数学\(\,Ⅰ\,\)だけではありませんけど、
「数と式」の基本はすべての基本ですね。